第2章 ◆大切な人(膝丸)
髭切さんは膝丸さんのお兄さん。
今まで鍛刀するたびに「兄者だったか?」と気にするほど、膝丸さんは彼が来るのを心待ちにしていた。
それをずっと見てきた私は、髭切さんと膝丸さんを同室にした。
待っていた大切な人とやっと巡り会えたのだから、できるだけ一緒にいられたらいいなと思う。
そうすると、昼は任務に仕事、夜は兄弟水入らず。
私と触れあうのは朝のみ、というサイクルになったのだ。
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「兄者はちゃんと、馬の世話ができているだろうか…」
膝丸さんは私の仕事を手伝ってくれている間も、こうして髭切さんの話をする。
マイペースな髭切さんのことが心配でたまらないみたい。
…兄弟思いで、すごく膝丸さんらしい。
私は机の上にたくさん広げていた書類を整えて、右のすみに片付けた。
「髭切さんも頑張って下さっています。もし気になるなら、様子を見に行ってきても大丈夫ですよ」
「いや…今はいい。主が仕事中だ」
「ちょうど区切りがついたところです。休憩にしますから、どうぞ」
「……主…いいのか?」
「はい。いってらっしゃい」
髭切さんのことが気になってウズウズしているのがこちらまで伝わってくるため、私は笑顔で背中を押した。
ずっと恋人としての膝丸さんばかり見てきたから、こうして彼が弟として振る舞っているのは、可愛らしくて微笑ましい。