第2章 ◆大切な人(膝丸)
────「あるじっ…」
朝、布団から出て「おはようございます」と言っただけなのに、膝丸さんはもう一度私を布団に倒し、強引に口づけてきた。
「…ん…膝丸、さん…」
「好きだ、主っ…あるじっ…」
私はそれを受け止めて、自分からも彼に舌を絡ませていく。
最近の私たちは、毎朝こんな情熱的な口づけをする。
この本丸の審神者である私と、近侍の膝丸さん。私たちは恋人同士だ。
「すまない、主…また夢中になってしまった」
今日の朝は口づけだけでは済まなかったこと、膝丸さんは私を抱き起こしながら謝ってくれた。
「いいんですよ、膝丸さん。私も同じですから」
本当は私のほうこそ心待ちにしているけど、いつも彼から迫ってくれるから、おまかせしている。
少し不器用だけど正直な膝丸さんが私を求めてくれることが、とても嬉しかった。
「朝しか主に触れられぬと思うと…体が勝手に…」
「…膝丸さん…」
朝しか触れあえないのには理由がある。
私たちが恋人同士になったことは、まだ本丸の皆さんには内緒にしている。
いざ話そうとすると恥ずかしくて先伸ばしにし続けた結果、タイミングを失ってしまったのだ。
何かの折りに、何かの折りにと思っていたところで、もうすぐちょうど私の本丸は二周年。
そんなとき、この本丸に“髭切さん”をお迎えできたのだ。