第2章 プロローグ
「そいつが転校生か」
パーカーのフードを被り、額に派手な飾りをつけた宇髄先生が声をかける。
「おお!ようこそ我が学園へ!!」
続けて、シャツにネクタイという教師らしいシンプルな装いをした煉獄先生が歓迎をした。
返す声を持たない理緒にとって、話しかけられるというのは苦痛だ。
それに教師ならば、理緒が声を失くした理由を知っているはず。
同情から良かれと思って、話しかけられているならば尚のことだ。
「どうした?緊張してんのか?」
何も返さない理緒に、宇髄先生は疑問を投げかける。
「転校初日で不安になるのも仕方がないな!」
憶測に同意する煉獄先生。
「名前を聞いたときもずっと黙っていたが、緊張していたのか」
その冨岡先生の発言に、理緒は違和感を覚える。
あれは私の名前を呼んでいたのではなく、尋ねていたのか。
いや、そこではなくて。
どうして緊張しているという前提で話が進んでいるのか、だ。
もしかして──声が出ないのを知らない?
ポケットから筆談用に忍ばせてあるメモ帳とペンを取り出して、おずおずと書き記す。