第2章 プロローグ
『声が出ない』
そう書いたページを見せる。
三人の視線が、メモ帳へと向かう。
それを読んで真っ先に口を開いたのは宇髄先生だ。
「なんだ早く言えよ。風邪か?」
その問いに、本当に知らないのだと、心の隅で安堵していたことを、理緒は気づいていない。
首を振って、否定をした。
「ならば精神的なものか」
冨岡先生の淡々とした発言に、小さく頷いた理緒の表情は強張っていた。
追及されるのだろうか。どうして声が出なくなったのか、と。
そんな理緒の思いとは裏腹に、
「そうか、大変だったんだな!辛かっただろう!」
煉獄先生は笑みを絶やさず労う。
呆気に取られた理緒は、肩に入っていた力が抜けていくのを感じた。
「あんま無理すんなよ」
宇髄先生は少しばかり微笑んで、頭を軽く撫でた。
その手の大きさと温もりから、優しさが伝わる。
「何かあれば言え」
冨岡先生は表情を変えずに、そう告げた。
どうして、
何も聞いてこないの?
その答えは出ないが、
理緒はただ救われる思いだった。