第2章 プロローグ
道すがらにパン屋を見つけた。
チェーン店ではなく、一階がお店で二階が住居となっているような個人経営の店だ。
昔ながらの稀有な佇まいに惹かれて、立ち寄る。
「いらっしゃい」
凛とした、けれども柔らかな声が、静かに響く。
入口から真正面に立っている声の主である女の人と、必然的に目が合った理緒は小さくお辞儀をした。
にこりと店主の女性に微笑まれ、理緒は目をそらして逃げるようにトレイとトングを掴む。
カチカチとトングを何度か鳴らす威嚇行動を取ってから、パンを選ぶ。
開店してすぐだからか、品数は少ない。
ロールパンをトングで取り、トレイにのせた。
お会計を済ませると「良ければ、また来てちょうだいね」と、再び微笑まれ、その美しさに息を呑んだ。
理緒は、すぐに頭を下げて店を後にした。
とても綺麗で、なんだか暖かい人だった。