第4章 麻に連るる蓬
保健室からなかば追い出された二人は、教室へ戻ることにした。
教室のある階についたとき、チャイムが鳴った。
授業の終わりを告げて、休み時間の始まりを報せる。
「ちょうどよかったな。授業中に入るのは気まずいもんなぁ」
と、炭治郎は朗らかに呟いた。
理緒は先ほど教室を飛び出してきたことを思い出して、少し憂鬱だ。
また見世物のようになるのだろうか。
そう思うと、足取りは重たい。
歩調がゆっくりになり、表情から明るさが消えたことから、炭治郎は彼女の心境を察した。
「よし、理緒!」
突然、名前を呼ばれて、理緒は驚きと照れが混ざった顔をする。
「手を繋ごう!」
……はい?
いや、なんで?
彼女の疑問をよそに、炭治郎は彼女の手を取る。
いきなり握られた手に、あわあわしていると──
「ア゙━━━━━━━ッ!」
廊下に、汚い高音が響いた。
声の主である善逸は一瞬にして、間合いを詰める。
「炭治郎……! お前……!!!!」
「ああ、善逸」
「『ああ、善逸』……じゃねぇよ!?俺が真面目に授業を受けているときに!!!なんで!お前は!理緒ちゃんとイチャイチャしてんだよ!!!」
「いや待て!」
「いいや!待たないね!!これが待っていられるか!!!」
「あのな、善逸」
「転校初日の女の子を追いかけて教室を出ていったと思ったらァ!手ェ繋いで帰って来て!!!」
「これには訳が」
「いいご身分だな!!!炭治郎!!」
炭治郎は話をしようとするが、聞く耳を持たない善逸には何を言っても仕方がない。