第4章 麻に連るる蓬
保健室へ向かうため、更に階段をおりていると、
「お前ら、何やってんだ?」
そう後ろから問い掛ける男の人の声に、理緒は肩をびくりと跳ねさせた。
二人は振り返り、声の主を見る。
ああ、まずい。今は授業中だ。先生に見つかれば、咎められるに決まっている。
どう言い訳したものか。
私のせいで炭治郎まで怒られるのは嫌だ。
せめて炭治郎だけでも──
と、ぐるぐる思考を巡らせる。
そんな理緒とは対照的に、炭治郎は、
「あ、宇髄先生!おはようございます!!」
元気いっぱい挨拶をした。
なんで??
授業をサボっていることを微塵たりとも気にかけた様子はない。
「おう、炭治郎。おはよう」
そう言いながら、宇髄先生は二人の傍まで階段をおりてきた。
「何してたんだよ。授業出ずに逢引きか?」
よりにもよって、そんな風に勘違いされてしまうだなんて、と理緒は焦りを募らせる。
「違いますよ!あれ、違わない、のか……?」
ちゃんと否定してくれ。
黙って見ていることしかできない理緒はそう願う。
炭治郎の曖昧な答えに、宇髄先生は快活に笑って、
「地味だが、青春してんな!いいじゃねえか!」
そう言うと炭治郎の肩を叩いた。
いや、どうしてそうなる。
理緒の疑問は尽きないが、そんなことはお構い無しに話は進む。
「ちゃんと天春のこと護ってやれよ!」
「はい!」
「んで、これからどこ行くんだ?」
「保健室です」
その回答に、宇髄先生は目を見開き、
「なんだ怪我したのか」
そう言いながら、ちらりと理緒を伺う。
その視線に理緒は気づいていたが、すぐに炭治郎に戻ったことから気にとめることはなかった。
宇髄先生は少し陰った表情を浮かべながら、炭治郎に尋ねる。
「……大丈夫か」
「大丈夫です。念のために診てもらうだけなので!」
そう炭治郎が明るく言い切ると、
「そうか。気をつけろよ」
そう注意をすると宇髄先生は去っていった。
それで……、終わり?
てっきり咎められると身構えていた理緒は拍子抜けした。