第3章 合縁奇縁
「うわっ!危ない!こら、大人しくするんだ!」
赤面しながら暴れる理緒を落とさないようにと、炭治郎は器用にいなしながら、階段をおりる。
「落ちたら、怪我するぞ!」
炭治郎の注意は、理緒には届いていない。
耳から入ってくる声は羞恥心で掻き消され、炭治郎が何を言っているかなど、理解するつもりもなかった。
ただただ恥ずかしくて、兎に角にも、おろしてほしいだけである。
顔が熱くて、鼓動は急いている。
それなのに炭治郎は、照れた様子もなければ、恥じたようにも見られない。
理緒は自分ばかり意識してる事実も嫌だった。
「頼むから、落ち着くんだ!」
力任せに、炭治郎の胸を両手で押す。少し身体は離れたが、すぐに炭治郎が抱えた腕で引き寄せた。
そんな小さな交戦に、炭治郎は気をとられてしまう。歩幅が合わなくなり、階段から足を滑らせた。
空中に、理緒は放り出される。
炭治郎はすぐさま階段を蹴って跳躍し、理緒を抱きしめて庇いながら受け身をとった。
階段の踊り場に、とても鈍い音が響いた。