• テキストサイズ

袖振り合うも多生の縁。 / 鬼滅の刃 /

第3章 合縁奇縁


 屋上へと続く階段をのぼる。

 屋上の扉は安全のために、鍵がかかっている。

 開かない扉に用はない。それ故に、人が訪れることのない場所になるのである。
 それは前の学校で学んでいた。

 念のために扉が閉ざされていることを確認してから、扉を背もたれにして座り込む。

 深い溜め息を吐くと、理緒の声を代弁するかのようにチャイムが鳴った。

 休み時間が終わってしまった。
 教室へ戻るに戻れない理緒は、一先ずここでやり過ごすことに決めた。

 初日から、授業をすっぽかすだなんて最悪だ。
 自己嫌悪に陥りながら、膝を抱えて顔を伏せた。


 突発的に出てきてしまった。
 明らかに、不審な行動だった。
 ……けれど、これで敬遠されるはずだ。

 みんな、放っておいてくれるはず──
 

「こんなところにいたのか」
 
 突然降ってきた声に、心臓が跳び跳ねた。 
 理緒は勢いよく顔をあげる。

 目の前には、炭治郎がいた。

 声をかけられるまで全く気がつかなかった。
 なんで、と口をぱくぱくと動かすも、声はまるで出ない。
 察したらしい炭治郎は、平然と告げる。


「俺は鼻がいいんだ。においを辿って来た」

 真性の変態か何かだろうか。

 驚きのあまり、理緒は口の中だけで罵倒した。


「どうしたんだ?」
 と、炭治郎が首を傾げるのに対して、彼女は首を振る。

 いや、言いたいことは色々ある。

 しかし、筆談に必要な紙とペンは、教室に置いてけぼりにしてきたのだった。

 そこには、早急に合点がいったようで、
「ああ、そうか。筆談じゃないといけないんだったな」
 と、困ったな……と唸る。

 筆談道具を取りに行ってくれれば、その隙に移動しよう。

 においを辿って来たなんて、半信半疑な理緒はそう考えていた。

/ 35ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp