• テキストサイズ

袖振り合うも多生の縁。 / 鬼滅の刃 /

第3章 合縁奇縁


 休み時間となり、気もそぞろだった者たちが一人、また一人と理緒の周りに集まる。
 興味津々で注がれる、たくさんの視線が煩わしい。

 誰かと仲良くなりたくて、学校を変えたわけじゃない。ただ、何も知らずに放っておいてほしいだけだ。

「ねえねえ、天春さん!」
 話しかけてくる群れに、筆談用のメモ帳とペンを取り出した。会話は必要最低限にしたい。

「どこから来たの?」
 理緒は、たった一言、書き記す。
 
『知らない』
 
「え?知らないって、何それ」
「なになに、記憶喪失?」
 茶化すような質問に、先程書いた文字をペン先で叩く。

『知らない』

 顔を見合わせ困惑しているようだが、理緒は構わない。

 気を取り直した誰かが、また尋ねる。
「どこ住んでるの?」

 理緒はまたペン先で文字を叩く。
『知らない』

 それからいくつか質問が続いたが、全て『知らない』の一点張りで通した。

「どうして、知らないばっかりなの」
「何も答えたくないんだって」
 そう、何も答えたくない。わかったなら、早くどこかへ行って。


「そもそもさぁ、なんで筆談なの?」

 その疑問に理緒は無意識に唇を噛み締めた。


 拳を固く握って立ち上がり、呆気にとられる周りを無視して教室を飛び出した。

 突然の行動に、周囲はどよめく。
 しかし、それを気にする余裕はない。


 あと少しで、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴る。

/ 35ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp