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甘美な林檎パイを独り占め

第2章 ルキノ|♦諦めようか



朝早く、目が覚めた

シャワーを済ませ、着替えて
髪を乾かしながら
今日は何をして過ごそうかと考える

ルキノとは毎日お昼から約束している
勿論今日も行くつもりだ

ただ、いつもと違うのは彼には
もう気持ちを伝えない

私の気持ちを伝えた事で、これ以上困る顔を
させたくない

彼を好きな気持ちまでは捨てられない
…今はまだ

だから心の中だけで彼を想う

軽く作ったサンドイッチを片手に
庭へ行く

誰もいない、静かな空間
今はそれが心地いい

サンドイッチを食べながら
ぼんやりと考え事をしていたら

「……ぃ!おい!」

誰かに呼ばれたような気がして
振り返る

「たく…、何してたんだ?
寒いんだから、そんなに薄着だと風邪を引くぞ」

そういいながら、暖かそうな上着を
掛けてくれたナワーブ

ほら、行くぞ。とそのまま手を引っ張られながら
広間へと向かう

連れていかれる途中に自分の身体に触れる
確かに、彼の言う通り冷えていた

暖炉で段々と暖かくなってきた身体

ふと、時計に目をやると
ルキノとの約束の時間がせまっていた
ナワーブにお礼を言い、上着を返そうとするが

「寒いから着とけ。明日にでも返してくれたらいい」

なんて言いながら去ってしまった

まあ、それもそうか…と納得しながら
少し急ぎめにルキノの元へと行く



トントン…

「開いているよ」

『お邪魔します』

こちらを一瞥すると
少し険しい顔になったものの
すぐにいつものルキノへと戻る

そこからは彼の研究の事や、
今日のお昼ご飯やおやつの話をした

すると突然、

「それは君の上着ではないようだが、
誰のかね」

どうしてそんな事を?と疑問に思いながらも

『ナワーブくんが貸してくれたんです。
身体が冷えるから、って』

優しいですよね、なんて言いながら
彼の方を向くと

いつもとは違うルキノ
心做しか周りの空気をピリついてる気がする

『あ、あの?ルキノさん?』

声を掛けても返事はない

もう一度声を掛けようと口を開くと

「、君は
あれだけ私がいい。好きだといっておきながら
簡単に違う男に靡くようだな」

言われた事が理解出来ずに固まる

『…え?
いやナワーブくんはそんなのじゃないです』



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