第8章 ベイン|夜更けに君を想う
『私とベイン…付き合っているはずなのに
なんで何の進展もないんだろう』
夜に独りで晩酌をしながら
ぽつり、と出た言葉
でもそれはの心の奥底から
じわりじわりと侵蝕してきて
自分を苦しめる切実な悩みだった
もう心が限界だと、
叫んでいるのかもしれない
好きなのに進まない関係
言葉に出してくれない不安
一緒に過ごす時間が少ない事
私だけが彼の事を考えているのかな、と
彼からしたら重要じゃないのかもしれない
私との関係なんて、と
月を見ながらまたお酒をひと口
こんな時に彼が、
ベインが来てくれたらいいのに
夜風に吹かれながらそんな事を思う
「…お酒をそういう風に味わうのは
美しいとは言えないね、」
『ジョゼフさん…。
分かってはいるんですが…ね。
もうお酒に頼るしかなくって…』
はは、と笑っているだが
その顔は引きつっていて、
張り付けたような笑顔なのは
誰が見ても明らかだろう
全く…好き同士なら、
己で解決すればいいものを
何故こんなにも分かりくどいものなのだ…
嗚呼 それが恋というものか
心の中で自問自答しながら
目の前にいるの横に
腰掛けながら話すジョゼフ
「まあそれも苦しみを紛らわせるには
いいかもしれない。だがそれは
あくまでも一時的なものでしかない。
分かっているとは思うが、
悩みの種の彼にその苦しさを
打ち明けるのが一番の近道だと、
私は思う」
『確かに…そうですよね。
ベインとぶつかるのが怖くて…
でもそれだといつまでも
変われないですよね…』
もう少し頑張ってみようかな、と
先程よりも自然な顔で笑うに
「あぁ、それがいいと思うよ。
それじゃあ、私はここで失礼すると
しよう」
そう言ってジョゼフは自室へと戻った
また独りでお酒を飲みながら
つい先程の事を考える