第8章 ベイン|夜更けに君を想う
うーん…ジョゼフにああ言ったものの
もし言って嫌われたりしたら…
それこそ立ち直れないな...
なんて独りでぼやいていたら
「…誰に嫌われたら、
立ち直れないんだ?」
落ち着く低めの声の主は
振り向かなくても分かる、ベインだ
聞かれた事にあたふたしながら
『いや、これは…!
そのー…何でもなくって…』
誤魔化そうと必死に焦った頭で
違う理由を言おうと考える
ぐい、と引き寄せられ
ベインの腕の中に収まる
初めての事に戸惑いながらも
彼に抱きしめてもらえた事が嬉しくて
そして彼の暖かさといい匂いで
ホッとする
お酒の勢いもあり、もうどうにでもなれと
願いながらベインに気持ちをぶつける
『…ベインは何で私と
付き合ったんだろうって
ちゃんと恋人同士なのはずなのに
今まで抱きしめたりしてくれない。
キスもしてない。
一緒に過ごせる時間も少ない。
恋人になる前と一緒じゃん。
ねえ、なんで恋人同士になったの?
…私達、どうするのか決めた方が
いいんじゃないかな、お互いの為に』
好きなのに
それなのに
彼に言いたいことを
優しく包んで
伝える事が出来ない自分に
嫌悪感を抱きながら
彼に問いかける
「…そうだな。
すまない」
2人の間に
冷たい風が吹き抜ける
「これは…言い訳になるだろうな。
と恋仲になれた事が
嬉しかったんだが、
何をどうすればいいか
分からなくて。
他の奴に相談したりしてたんだが
どうも恥ずかしさが勝ってしまって
行動に移せなかった。
そんなにも不安にさせてるとは…
すまない、」
と、落ち込んだ様子のベインに
悪いなと思いながら
安心した
なんだ、私はちゃんと
想ってもらえてたんだよかった
彼と自分の気持ちが一緒という事に
安堵して涙がボロボロと溢れる
『ごめ、んね…ベイン。
好きだよ』
緊張の糸が解けたの姿を
見て考えるよりも先に身体が動いた