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甘美な林檎パイを独り占め

第7章 カヴィン|恋人なのに



カヴィンと付き合いはじめてから
思うことがある

私、誰の彼女だっけ、って


『カヴィン、おはよう』

「おはよう、仔猫ちゃん。今日も可愛いな」

朝食を食べる為に食堂に向かう途中
カヴィンとばったり会った

勿論、カヴィンといつ会ってもいいように
お化粧はばっちりだし、寝癖もついてない

カヴィンに可愛いと褒められたい
その一心で

なのに最近は嬉しくない


「お、フィオナじゃないか。
おはよう。今日も綺麗だな」

「飽きないわね、カヴィン。
おはよう」

そう、フィオナだけではない
女の子には皆に言う

可愛い、綺麗、素敵
そんな事を付き合う前に言われた時は
夜、嬉しすぎて寝れなかったほどだったのに

今となってしまっては
他の人にも言う、その言葉が嬉しくない

下心はないかもしれない
本人にも怖くて言えない

『私以外の女の子を褒めないで』

って言ったら終わりのような気がしてならない

先程までの会った嬉しさは消え去り、
女の子に綺麗だと褒めるカヴィンを
見たくなくて

少し朝食を食べ、自室に戻る



食欲も出ない
なんなら同じ食堂に行きたくない

同じ場所に行けば嫌でも見てしまう
聞こえてしまう

耐えられない

そんな事を考えながら
ふらふら、と自室のベッドに倒れ込む



─────コンコンっ


どれほどそうしていたのだろうか、
多分今はお昼くらいだろう

ノックした誰かに

『どうぞ』

と声を掛ける


ガチャリ、と扉を開けて入ってきたのは
イライだった

『ん、どうしたの?』

「すまないが、ゲームの呼び出しだ」

『分かった、ありがとね。イライ』

「あぁ、疲れているようだし、無理はいけないよ」

イライは何でも分かってるんだなぁと感心しながら
ゲームの準備をする

じゃあまたあとで、と部屋を去ったイライ

ゲームは誰と一緒かしら、なんて思いながら
その場所へと向かう



そこにいたのは

イライ、カヴィン、エマ…そして私

今はあまり会いたくないなと思っていたのに

私が来ても軽く挨拶だけで
すぐにエマと話してるカヴィン

誰の彼女か分かんないな、と
思いながら準備を終わらせる

イライが心配そうな顔で見てくる事に
多少の申し訳なさを感じながら

ガラスが砕ける音が聞こえ、意識が遠のく

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