第5章 リッパー|エッグノッグ
冬になるとココアが飲みたくなる
いや、ホットミルク?
う~ん…と1人頭を悩ませながら
キッチンで、牛乳とお砂糖、
そしてココアの粉を準備していた
『どうしようかなぁ…
どっちも飲みたい…
でもそんなにたくさんは飲めないし…』
ぶつぶつと小声で呟く
そこにたまたま通りかがったジャック
「さん、何をそんなに
悩んでるんですか?」
不意に声を掛けられ、肩がびくっと
跳ねるように驚く
声のした方を向きながら
『あ、ジャック。
んー、今から何飲もうか迷ってて…』
ホットミルクか、ココアの2択なんだけど
なかなか決められなくて…と
恥ずかしそうに少し頬を染めながら
ぽりぽりと頬を掻く
「どちらも美味しいですからねえ。
確かに悩ましい…」
と、これまた先程のと
同じように頭を悩ませるジャック
少しして、閃いた様子で
手を叩く
「いっそ、その2択じゃなくて
今日は私のおすすめを飲んでみるのは
どうです?」
確かに…いつもホットミルクか
ココアだったから、
たまには…違うのでもいいか…と
頷く
それを見たジャックは、
久しぶりに作るので、楽しみですねえ
なんて、1人で浮かれてる
珍しい光景かもしれない
『何を作るの?』
と訊ねても彼は
ふふっと笑い
「それは出来るまでのお楽しみですよ、
さん」
誤魔化すから、完成が待ち遠しい
小鍋に、卵黄とお砂糖を入れて、
クリーム状になるまで混ぜたら
牛乳を少しずつ加えて、混ぜる
弱火で沸騰させないようにじっくりと、
少し温め、とろっとしたら完成
無駄のない動きで作るジャックを見つめる
いつもとはまた違う彼に
心臓が煩く鼓動する
その所為なのか、
の頬がじわりじわりと
紅くなる
そんな時
「さん、私と貴女の分の
マグカップを出してくれますか」
くるり、とこちらを向くジャック
予想だにしないタイミングで振り返られた事に
動揺を隠せないまま、椅子から立つ
ぐらり、
足が椅子に引っかかり体勢が崩れる
あ…もう倒れる…
そう思い、次に来る痛みに耐えるよう
ぎゅっと目を瞑る