第15章 雨降って地固まる
*轟side
横並びにソファに座り、コーヒーを飲んで一息つくと、
リョウがゆっくりと口を開いた。
『...なんか、久々だね、こういうの。
前に焦凍が家に来た時から、すごく時間が経った気がする。』
リョウの声はいつも通りの明るいトーンのままだが、
いつもよりも慎重に言葉を選びながら話しているように感じた。
少なからず、俺に気を遣っているのだろう。
無理もない。
体育祭期間の俺は、自分でもどうかしていると思うくらい、親父との確執に捕らわれ、盲目になっていたのだから。
『改めて、体育祭準優勝おめでとう!さすがだね〜!』
「...ありがとう。お前も4位だろ、健闘したな。」
『ありがとう!試合直前に焦凍が声かけてくれたおかげだね。
...って言っても、最後は悔しい負け方しちゃったから不完全燃焼感が否めないけど』
リョウは、手元のマグカップに視線を落して弱々しく苦笑する。
悔しい負け方...
常闇との試合で、当初は優勢だったにもかかわらず、個性が暴発して戦闘不能になったことを気にしているのだろう。
「お前が首の制御装置を外して戦っているところは初めて見たが...
正直、かなり心配した」
『うっ...!それはもう、自分でも痛いくらいに自覚してます...』
「個性発動中の様子が明らかに異常だったぞ。体にも相当負荷かけたんじゃねぇか。」
『まぁ、ご存知の通り試合中にキャパオーバーして倒れちゃったしねぇ...』
「もう体調は大丈夫なのか?」
『余裕!寝たら治った!』
「単純なヤツだな」
『....不謹慎かもしれないけど、ちょっと嬉しいなって、思っちゃった』
「?」
『ほら、前に焦凍が家に来た時期とかって、ゆっくり2人で話す機会が多かったじゃん?一緒に登下校したりさ。
でも、体育祭前から全然会わなくなって、体育祭当日もピリピリしてて...全く相手してくれなくなったから、正直、嫌われちゃったのかなって思ってたんだよね。
でも、本当はそうやって気にかけてくれたんだって知って、嬉しかったし、安心した。私の杞憂だったみたい。」
リョウの声はいつも通り明るいが、その表情は少し、寂しそうだ。
ああ─
俺はこいつに、こんな顔をさせたいわけではなかったのに。