第15章 雨降って地固まる
*主人公side
『はーい』
「リョウ。....焦凍だ。」
思いもよらぬ人から電話がかかってきて、鼓動が少し早まった。
体育祭当日に少しだけ話したとは言え、この2週間、焦凍とまともに会話をしていなかったから。
...考えすぎかもしれないけど、体育祭直前は少し避けられていた気すらする。
『珍しいね、電話かけてくるなんて。どしたの?』
思うことはいろいろあるけれど、私はあくまで冷静に応える。
「悪ぃな、休日に。
...なんとなく、お前の声が聞きたくなって」
『....!』
電話がかかってくる直前までソファの上でだらけていたのに、
焦凍が柄にも無いことを言ったせいで、つい背筋を伸ばして座り直してしまった。
つくづくこの人はずるい。
飄々と、全く声色を変えずにこんなセリフを言ってしまうなんて、反則じゃないか。
電話越しの私の顔が赤くなっていることなんて、想像もしていないんだろうな。
「今日、家に行ってもいいか?
話したいことがあるんだ」
『う、うん!良いよ!』
「それじゃあ、ちょうど今用事が終わったところだから、そっちに向かう。」
『おっけー!待ってるね』
「ああ。後でな。」
動揺しているのが伝わってしまわないように、淡々と、最低限のやりとりで電話を終わらせた。
私は基本的に自分のペースで生きているタイプなので、人のペースに巻き込まれることに耐性がついていない。
その最たる例が焦凍で、彼と話していると、自分のペースを乱されて、今みたいに動揺してしまうことが時々ある。
そして─
相手のペースに巻き込まれると、つい負けず嫌いの血が騒いでしまう。
表面上だけでも、強気で冷静なフリをしてしまうのだ。
我ながら、こういうところが本当に可愛くない。
『...ってか、ただのクラスメイト相手に、考えすぎか』
なんて、自嘲的に笑ってみた私は、
気を紛らわせるために、焦凍の分のコーヒーの用意を始めた。