第14章 仮説検証
*主人公side
勝己は何も言わずに、膝を抱える私に背中を預けてきた。
広くて暖かい背中。
頭をくっつけると、いつもの甘い香りがした。
ああ、落ち着く。
突然、勝己がこちらに顔を向けた。
——しまった、泣き顔を見られてしまった。
「.....良い顔してんじゃねーか」
案の定、彼が優しく慰めてくれるはずもなく(微塵も期待していなかったけど)、
それどころか嗜虐心たっぷりの歪んだ笑みを浮かべた。
『ちょっとは慰めろや、悪人面』
「は?てめぇ、俺にガラクタ預けたの忘れてんじゃねーだろうな」
勝己は、俯く私の顎に手を添えて、
クイっと顔を上げさせた。
『あ....!そうだ、人質とられてたんだった』
「てめぇが無理やり預けてきたんだろうが殺すぞ」
『あの....ごめん、今、個性の反動で全身痺れてるから、つけてもらっても良い?』
「ったくめんどくせぇな....ほら、さっさと後ろ向けや」
断られると思ったけど、なんやかんややってくれるんだな。
言ってみるもんだ。
私は、少し関心しながら勝己に背を向けた。
背後から抱きしめるような体勢で、勝己の腕に包まれる。
普段は気付かなかったけど、彼の肩幅はとても広くて、改めて体格差を実感させられた。
私たち以外誰もいない静かな医務室で、勝己の吐息が首筋に触れると、
変に意識してしまって、柄にもなく少し緊張する。
『......』
鍛え上げられた筋肉質の太い腕に、不覚にも見惚れてしまった——-その瞬間、首筋に鋭い痛みが走った。