第13章 蟠り
*主人公side
「緑谷くん....場外!
轟くん──3回戦進出!」
デクくんと焦凍の試合は、大波乱の中幕を閉じた。
彼らの戦い方は、体育祭と言うにはあまりにも激しく、試合後の競技場はめちゃくちゃに破壊されてしまったので、会場補修のために、次の試合は少し遅れて開始することに。
次の出番に向けて心の準備ができていなかった私は、ホッと胸を撫で下ろす。
『バクゴー』
「あ?」
『私、そろそろ控え室行くんだけど....
その前に、ちょっと手貸してくれない?』
「...?」
私は怪訝な表情の勝己を無視して、両手で彼の左手を握り、自分の頬に触れさせる。
アーモンドのような甘い香りを嗅ぐと、強張っていた肩から力が抜けるのがわかった。
「なんの真似だ」
『試合前の精神統一』
「俺を巻き込むんじゃねぇ」
不躾な言い方をする割に、彼は手を引っ込めようとはしない。
少しずつわかってきたのだけど、こういうところ、案外優しいんだよなぁ。
『なんか不思議だな。
こんなに乱暴なやつなのに、いざというときに隣にいるとすごく落ち着く。』
「....どこまでもわけわかんねぇやつだな」
『感謝してるってことだよ!ありがと!
ほんなら行ってくるね!』
「橘さん、健闘を祈りますわ」
「同じ電気属性として、俺の恨みを晴らしてきてくれ!」
『ありがとうだよ〜!いってきます!!』
私は、ピリピリとした体の痛みを誤魔化すように大袈裟に両手を張って見せながら、観戦席を後にした。