第12章 心配性
*主人公side
1回目の対戦相手は、B組の男の子だった。
そして...
自分でもびっくりなのだけど、
試合はなんと5分で終了した。
「リョウちゃん、おつかれさま!
1回戦勝利おめでとう!」
クラスメイト達のいる観戦席に戻ると、
デクくんが満面の笑みで迎えてくれた。
『ありがとう!
なんか、自分でもよくわかんないまま終わっちゃったんだけど...』
「あ、そのことなんだけど、さ」
デクくんは、急に周りを気にする素振りを見せ、声をひそめる。
「いつもより電撃の強さと飛距離が長いと思ったら、
制御装置...つけてないんだね。」
『そう!よく見てたね』
「個性の暴発を防ぐために制御装置を付けてるって話、印象的だったから...
個性、調整できるようになったの?」
『いや、ぶっちゃけ全然手応えなかったかも..』
「そっか...余計なお世話かもしれないんだけど、
反動とか、大丈夫だった?普段よりも体への負担が大きいんじゃないかなって」
....ただの内気でふわふわしてる子だと思ってたけど、
つくづく洞察力が鋭いな。
とりわけ、他人の個性の分析には抜かりがない。
手元のノートをちら見すると、つい先程の私の試合についてのメモがびっしりと記載されていた。
実際のところ、デクくんの指摘は図星だ。
試合自体は5分くらいの短さだったのだけれど、
感覚的には、もう半日以上個性をフルで発動し続けたのかと思うくらい、体が疲弊している。
その上、自分の個性に感電してしまい、左手が強く痺れている。
でも...
この体育祭で大活躍しているデクくんに、そんな恥ずかしいところ見せたくない。
『んー、意外と大丈夫みたい!
心配ありがとね!』
精一杯強がって、笑顔で親指を立てる。
──しょうもない意地なのはわかってるけど、クラスメイトといえど、今日はライバルなのだから。