第12章 心配性
*主人公side
『お隣失礼〜』
「...」
『あれ、上鳴は?』
「控室」
『そか』
「リョウ、おつかれ!瞬殺だったな。余裕そうな顔しやがって。
対戦相手がお前じゃなくてよかったぜ。」
『えへへ、ありがと〜』
正直、体のコンディションは全然余裕じゃないけれど、
幸いにも鋭児には気付かれていないみたい。
私は次の試合を観戦するべく、勝己と鋭児の間の席に座った。
2回戦まで時間あるし、しばらくはここでゆっくりしておこう...
『ふぅ........っ!?』
長いため息をついた瞬間、
勝己が無言で左腕をつついてきた。
痺れていた左腕に、激痛が走る。
「どこが余裕そうな顔だよ」
『...なにすんの』
「でけぇ顔して人にガラクタ預けたくせに、
情けねぇな」
むかつく。
そういえばこいつも、デクくんと同じくらい洞察力は相当高い。
デクくんと違う点は、私に優しくないことだ。
「あの短時間でどんだけ体に負荷かけてんだよ。
てめぇは自殺志願者か?個性の持ち腐れにも程があんだろ。」
『....そんなこと、勝己に言われなくてもわかってるよ』
ああ、
自覚している欠点を全て指摘された。
悔しい。
「爆豪、素直じゃねぇなー!
リョウ、翻訳すると、"心配だから怪我しないように次もがんばれ"ってことだぜ!」
「勝手に適当なことぬかしてんじゃねぇぞクソが!」
『....えへへ、そっか。
ありがと。』
口を開くと悪口しか出てこないけど、ちゃんと私の試合を見ててくれたんだな。
本当に心配してくれているのかは怪しいけど。
よし....
2回戦も、気を引き締めて行こう。