第11章 証人
*爆豪side
俺が受け取ったもの──
それは、リョウが"制御装置"と称していたチョーカーだった。
初めて会った日からずっと、こいつの首ついていたものだ。
絶縁体(電気を通しづらい物質)の素材で、個性の暴発を防ぐ目的で常に身につけているらしい。
チョーカーを外すと、リョウの白くて細い首が露わになる。
『午後の競技では、外そうと思って』
「....」
『みんなが本気で取り組んでるところを見て、私も生半可な気持ちで挑むのはやめようって思ったの』
「....てめぇ、ただでさえ疲労で死に損ないみてぇなツラしてんのに、大丈夫なのかよ」
『言い方!
確かに、今みたいな状態で制御装置を外したことはあんまりないけど...
でも、ここで無理しなきゃ、一生中途半端な自分のままだなと思って。
せっかく自分を変えたくて雄英高校に入ったんだから、
狂ったように無理をしまくるって決めたんだ。』
「...そうかよ」
『勝己、外せ外せってうるさかったじゃん?
だから、外した記念に預けちゃう〜!』
「るっせぇいらねぇよこんなの!!!」
『...てのは半分冗談で』
「あぁ!?」
『他人から見たら些細なことかもだけど...
私の挑戦を、誰かに見守っててほしくて。
だから、なんやかんや一番付き合いの長いバクゴーさんに頼んだわけでした』
リョウはいつもの無邪気な笑顔で、
グッと親指をたててウインクした。
「...ゴミと間違えて捨てても文句言うなよ」
『頼むぞ、バクゴー』
リョウは、拳で俺の胸を軽く小突き、
スッと立ち上がってどこかへ歩いていった。
残された俺は、受け取ったチョーカーをしばらく見つめた後、
無造作にズボンのポケットに突っ込んだ。
あいつにはあいつの事情や決意があるんだろうが
そんなもの、今の俺には関係ねぇ。
さぁ....
午前中は不本意な結果で終わったが、午後は何がなんでも勝ち上がる。
この体育祭で、完膚なき1位を獲るために。