第7章 君の個性
*心操side
『ヒーローに向いてるとか、向いてないとか、正直よくわかんないや。
ただ、心操くんと仲良くなりたいと思ったから聞いてみたの。もちろん私も教えるし!人間関係を深めるためには自己開示でしょ?』
考えれば考えるほど、意味のわからない状況だ。
ヒーロー科A組の推薦入学者というだけでも目立つのに、その容姿と人間性で知名度が高く、ファンの多い橘が、やたらと俺につっかかってくる。
こいつみたいに個性に恵まれた奴は...正直苦手だ。
いつも廊下ですれ違う度に挨拶をしてくるので適当にあしらっていたが、今日は学校内で迷ったとヘラヘラしながら教室に入ってきたと思ったら、俺のことをもっと知りたいという。
俺は、自分の個性があまり好きではない。
ヒーロー向きではないし、その特異さゆえ、”ヴィラン向きの個性”と揶揄されることが多かったからだ。
「....そんなに知りたいか?」
『うん!!!』
会うたびに思うが、本当に何を考えているかわからない。
無防備に身を乗り出し、無邪気に瞳をキラキラさせて俺の話を聞こうとしている。
「後悔しても知らねぇからな。」
『?』
「....ところで、今日、雨降るっけか?」
『いや、晴れるって言ってたけど.....っ!?』
俺の何気ない問いかけに答えた瞬間。
橘は違和感に気付いたようで、大きな瞳を更に大きく見開く。