第6章 猫とクラスメイト
*轟side
『なんか、さっきから私の話ばっかりだね。次は焦凍のターンだよ。』
「俺の話なんてしても、何も面白くないぞ」
デスクの上を一通り見物した俺は、キッチンにいるリョウに目を向けた。
いつの間にか、エプロンをつけて、髪の毛を高い位置に一つにまとめている。
「....似合うな、その格好」
『えっ....あ、ありがとうっ!
し、焦凍はソファでくつろいでていいよ...!』
「人の家に上がっといて何もしねぇのも落ち着かねぇだろ。
俺も手伝うから、何か指示をくれ。」
なんて、もっともらしい理由をつけてキッチンに近づいたが、
本当はただ、赤面して下を向いているリョウを、もっと近くで見たいと思っただけだ。
図太い神経に、男顔負けの戦闘スタイルを見ていると忘れがちだが、
後ろから近づいてみると、想像以上に小さくて華奢だ。
髪を一つにまとめていると、普段は髪の毛で隠れている細くて白いうなじがよく見える。
『わかった...けど、そこにいられると落ち着かないからちょっと離れて....!』
「...わりぃ」
薄々感づいていたのだけど、どうも俺はこいつのペースを崩すことに楽しさを見出しているようだ。
学校では、いつも堂々と、それでいて嫌味もなく無邪気にふるまっているリョウだが、2人きりになると少し雰囲気が変わる。
普段見ることのできない新しい表情を探すのがなんだか面白くて、つい自分らしくない行動をとってしまう。