第6章 猫とクラスメイト
*轟side
「強いな、お前は。」
『....?』
「そうやって自分の"弱み"を人に開示することって、なかなかできないもんだろ。
自分の弱点に向き合って、克服しようとしてる証だ。
だから、お前は強いと思う。」
一瞬、俺の言葉に困惑したような表情を見せたリョウは、
そんなことないよ、と照れくさそうにクシャっと笑った。
...夕日に照らされた笑顔は、不覚にもすごく綺麗だと思ってしまった。
リョウに見惚れて猫を撫でる手が止まったその瞬間、
その猫は、伸びをしたと思ったら、ひと鳴きしてどこかへ歩いていった。
『焦凍...さ、この後時間ある?』
「...?ああ、特に用事は無いが」
『よかったら、うち来ない?』
予期せぬ提案に、一瞬間が空いた。
リョウがいつも以上に目をキラキラと輝かせ、俺の目を見つめてくる。
『もっと話したいなと思って!
何だったら、ご飯作るし!ね!!』
俺が言えた義理でも無いのだけど、
こいつの無防備さは時々本当に心配になる。
「お前、だれかれ構わず家に上げるの、危ねぇからやめたほうがいいぞ」
『何言ってるの、それくらい私でもわかるよ!
焦凍はクラスメイトだし、信頼できるから誘ったんだよ』
「...そうか。じゃあ、お邪魔するよ。」
『やったー!ご飯どうしよっかな、何が好き?』
「...そば。あったかくねぇやつ。」
『おっけー!えへへ、高校入学して初めてのお客さんだ、嬉しいな〜!』
リョウは子供のようにはしゃぐ。
俺が少し同様していることなど全く気付いていないのだろう。
ああ、こうして今日も俺は、こいつのペースに巻き込まれていくのか。
この居心地の良さにはどうしても抗えないな。