第6章 猫とクラスメイト
*轟side
意外な申し出に、少し驚いてしまった。
出会ってからの短期間ではあるが、俺の記憶の中のリョウは、どんな時も無邪気に笑っていた。
「誰かと一緒にいたい」のような感傷的な気分とは無縁のやつだと思っていたが...
昨日の、ヴィランによるUSJ襲撃事件を受けて、考えるところがあったのだろう。
「...俺もだ」
『?』
「昨日のヴィランたち、最初はただの雑魚ばかりの集団だと思っていたが...怪力の奴、ワープの個性、そして...あの思想犯みてぇなやつ。
改めて、プロが相手にしてるっつーもんを目の当たりにして、さすがに色々考えた。そしたらなんとなく落ち着かなくなって、散歩しに出てきた。」
『...きっと、みんなそうだよね』
えへへ、と弱々しく笑うリョウ。
マイペースで気丈なやつだと思っていたが...こう見ると、まだまだ普通の高校生だ。
「...つくづく、お前の考えが読めないな」
『ん?』
「肝が座ってると思いきや、意外と繊細な部分もあるだろ。
昨日だって、お前は俺や緑谷・爆豪・切島と一緒に、最後まで戦線に立ってた。正直、自分の個性に自信のある戦闘狂タイプだと思ってたよ、爆豪みてぇな。」
『勝己と一緒にしないで』
リョウは、子供のように頬を膨らます。
『私は...自分の感情に素直なだけだよ。
昨日はすごく感情が忙しい日だった。とにかくクラスメイトを守らなきゃって、誰かが前に立たなきゃって思ったから、焦凍達と戦おうとした。
同時に、ヴィラン達の未知数の強さや思想が強烈で、恐ろしいなとも思った。
そして...オールマイトの戦いを近距離で見て、プロヒーローへの憧れを感じたり、自分との実力差に絶望したり。
そんな感じで、いろいろな感情で頭がぐちゃぐちゃになっちゃって、焦凍の言う"繊細モード"になっちゃったんだろうね...えへへ』
「...そうか。」
『変だな、普段は弱音とか吐かないようにしてるのに...なんか焦凍が相手だとつい話し過ぎちゃうな。聞き上手だね。』
聞き上手、か。
いつもリョウが一方的に話しかけてくるのを、俺が適当にあしらっているつもりだったが...どうやら過大評価されているらしい。