第4章 ご近所さん
*主人公side
背後には電車のドア、顔の両脇には焦凍の手。
見上げると、至近距離に迫る焦凍の顔。
どうやら電車が揺れた衝撃から守ってくれたらしい。
さっき頬に感じたのは、胸板の感触だったようだ。
「...わりぃ、大丈夫か?」
驚きのあまり固まる私とは対照的に、焦凍は飄々としている。
....改めて見ると、本当に凶暴なビジュアルをしている。
グレーと水色のオッドアイに、火傷のような傷跡。
さらさらとした柔らかそうな猫っ毛。
端正な顔立ちからは想像できないくらい、がっちりした首と肩幅。
加えて、突然のこのシチュエーション...
自分の顔が赤くなっていくのがわかった。
だめだ、この近距離だったらきっとバレてしまう。
急にペースを乱されて、いつもの自分でいられない。
私は咄嗟に、下を向いて誤魔化した。
『だいっ...じょう、ぶ!ありがとう』
「...気分が悪いのか?吐き気には、足の甲のツボが」
『大丈夫だからっ!それよりさ、明日の授業、何するんだろうねっ』
あまり経験のない感覚だ。
今までの人生で「マイペースだね」と言われることは慣れっこだったけど、自分と同じくらい...いや、自分以上にマイペースな人に振り回されるのは初めてで、正直戸惑ってしまう。
気取られないように、なんてことない会話を切り出してみたけれど...
このクラスメイト、かなり危険かもしれない。