第21章 オリジン
*緑谷side
『──とまぁ、そういう過去があったから、私がヒーローを目指すのは、パパにとっては複雑みたい。
私の夢は全力で応援したいけれど、それ以上に、ママみたいなことになったらどうしようっていう心配が大きいんだろうね。
まぁ、親心としては当然なんだけど。
だから、今回のヒーローインターンも、最初は受け入れを断られてたんだ。』
「そうか、それでお兄さんも...!」
『うえっ、もしかしてルイともそんな感じの話した?』
「うん、少しだけ...
詳しいことは聞いてないんだけど、ルイさん、ヒーローが嫌いだって言ってた」
『そうなの。あいつはもう、相当な過激派で。
私がヒーローになることにはもちろん反対だし、そもそも危険を冒してまで戦うヒーローそのものに対して嫌悪感を抱いちゃってるんだよね。
唯一オールマイトに懐いているのは、”絶対に負けない安心感”があるからだと思う。必ず無事に帰ってきてくれるってのは、待つ側からしたら、一番嬉しいことでしょ。』
「”人に心配をかけないこと”も、立派なヒーローの条件だからね!
まぁ、懐いているというより、からかわれたりおもちゃにされていると言ったほうが適切な気もするが。」
『いやいや、嫌いなヒーローには嫌味しか言わないから、オールマイトの前だと相当可愛らしいもんだよ。』
こうして事情を聞いてみると、絶対に理解が及ばないと思っていた奇天烈な天才のルイさんの心理も、少しだけ理解できた気がした。
確かに、僕が彼と同じ立場だったら──家族がヒーロー活動中に殉職してしまったら、いくら妹がヒーローに憧れているとはいえ、素直に応援できないかもしれない。
「...リョウちゃんはさ、過去にそういうことがあったのに、どうしてヒーローになりたいと思ったの?」
素朴な疑問だった。
幼少期に家族が殉職したトラウマがあって、家族にすらヒーローを目指すことを反対されながら育ってきたというのに、親元を離れてまで雄英高校のヒーロー科に来るなんて、相当強い意思がないとできないはずだ。
何が彼女をそうさせているんだろう。