第21章 オリジン
*緑谷side
『自分が幸せでいるためだよ』
返ってきたのは、意外な答え。
「自分の、幸せ?」
『私はね、根本的にはすごく自己中で、わがままで、自分が楽しかったらそれでいいやってタイプなの。』
「.....」
『デクくんみたいに立派な自己犠牲精神もないし、正直、根っからのヒーロー気質じゃないと思う。
”みんなを助けたい”っていうような、崇高な目標もない。
でも...私から見える範囲にいる、私の好きな人達には、ずっと笑っていてほしい。
大切な人が傷つく姿を見ながら何もできないなんて──あんな悔しい思いは、一生したくない。」
「リョウちゃん....」
『強くないと、自分の周りの小さな世界の幸せすら守れないでしょ?
私の大切な人は、私が守る。
そのために、ヒーローになるの。』
「そっか....!
やっぱりリョウちゃんは、芯が強くてかっこいいな...!」
思わず本音を口に出すと、リョウちゃんは、ありがとうと言って、少し照れたようにはにかんだ。
あまりにも綺麗に笑うものだから、つられて僕も照れ笑いしてしまった。
こういう気持ちのこと、何て言うんだっけな...
キラキラとしていて、もっと相手のことを知りたいと思ってしまう。
『それじゃ、デクくん。お互いインターン頑張ろうね。』
ああ──
きっと僕は、「憧れ」とか「尊敬」とか、そういう感情を彼女に抱いているのだろう。
「うん!また、あっちでのヒーロー活動の話も聞かせてね!」
こうして、リョウちゃんとの距離が縮んだ日から、約一週間後。
僕たちは、少し違う形で、2度目のテレビ電話をすることになるのだけれど、この時はまだ、知る由もなかった。