第20章 イヤホン
*主人公side
『...私の家族、私がプロヒーローになるの、あんまり賛成してないから。』
「あの変態シスコン野郎もか?特別講師の。」
こいつ、人の兄をそんな風に認識していたのか。
とんでもなく失礼だけど、的確過ぎて言い返す言葉が見つからない。
「てめぇの家庭の事情なんざ知らねぇし興味もねぇけどよ」
『....』
「わざわざ親元離れて、外国の高校のヒーロー科に通わせてんだ、今更反対もクソもねぇだろ。
それに...」
勝己は、いちど言葉を止めて、意地悪そうに口角を吊り上げて笑った。
そして、私の首のチョーカーに指をかけ、まるでペットでも扱うかのように、自分の方に引き寄せる。
「体育祭で無理して個性を暴発させたあげくに負けて悔し泣きするような無茶苦茶な奴が、たかだか親に反対されたくらいでインターン先を妥協するとも思えねぇけどな」
『...っ!』
思えばそんなこともあった。
体育祭の個人戦の前、体調を崩していた私は勝己に遭遇して、「制御装置なしで戦う」と大見得をきったくせに、個性が暴発して準決勝で敗退。
試合後、お見舞いにきてくれた勝己の前で、感情を抑え切れずに悔し泣きしてしまったのだった。
他人に興味の無い勝己のことだから気にもとめてないと思ってたのに、しっかりいじってくるじゃないか...!
『医務室でのことは誰にも言わないでって言ったじゃん、みんなに聞こえたら...!』
「てめぇが勝手に懇願してきただけだろ。俺は約束した覚えはねぇ。」
『それでもヒーロー志望なの?発言だけ聞いたらただのヴィランじゃない...』
「そもそもお前の願いを聞き入れる義理も無ぇからな」
『........性格わるっ』
「おい、てめぇ、今ちょっと放電しただろ」
『なっ、なんのことかな』
「目ぇ逸らすんじゃねぇ、ピリピリ痛ぇから誤魔化したってもろバレなんだよ!
そんなに戦いてぇなら相手してやんよ、表出ろ!!」
喧嘩腰の勝己が立ち上がろうとした瞬間、カメラのシャッター音が鳴り響いた。