第20章 イヤホン
*主人公side
いつの間にか、隣に勝己が座っていた。
彼の片耳には、いつの間にか、私のイヤホンがついている。
考え事をしていたから、取られていたことに全くく気づかなかった。
「.....この曲、悪くねぇな」
『お、こういうの好き?』
「嫌いじゃねぇ」
『アメリカに住んでるときからよく聞いてたアーティストなんだ。』
イヤホンから流れる音楽に耳を傾けながら窓の外を眺める勝己の横顔は──悔しいけど、正直、かっこいいと思ってしまった。
あまりにも粗暴な言動が目立つから、普段はなんとも思ってなかったけれど....こいつ、黙ってたら普通に美形なんだよなぁ。
よくよく考えると、個性は強いし、戦闘においても天才だし、成績も良いし、全てにおいてスペックが高い。
他のクラスの女子のファンが多いのも、納得せざるをえない。
『勝己』
「あ?」
『インターン先、決めた?』
「まだだ。俺レベルだと、引く手あまたで大変なんだよ。」
『確かに、体育祭優勝者だもんね』
「体育祭の話はするんじゃねぇ、胸糞悪ぃ」
『焦凍との決勝戦のこと、まだ根に持ってんの?
器小さ、ださっ。』
「喧嘩うってんのか?
....てめぇこそ、どこ行くつもりだ。
俺ほどではねぇけど、結構オファーもらってたろ。」
『うん。
でも..,.本命のとこからは、オファーもらえてないんだよね。
だから、インターンさせてくださいって、直談判しようと思って。』
「図太ぇやつだな。
どこの事務所だ?」
『えっとね...
私の、パパの事務所』
「...そういや、親がプロヒーローっつってたな」
『そうなの。アメリカでヒーロー事務所やってるから、インターンするならそこが良いなぁと思って。』
「そんなん、クソチートじゃねぇか。
オファーなんざなくてもてめぇの親に頼めば一発だろ。」
『...それが、そうもいかないんだよねぇ』
「あ?」
それまで窓の外を眺めていた勝己が、怪訝な表情で私の方に顔を向ける。