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電撃少女はヒロインになりたくない

第20章 イヤホン


*主人公side



音の鳴った方を見ると、少し離れた席で勉強していたはずのみんながいつの間にか私達の近くに集まっていた。



「お前ら、人が勉強頑張ってるときにいちゃついてんじゃねーぞ!」


「もー、ちょっと目を離すとすぐ夫婦喧嘩始めるんだから」


「夫婦じゃねぇ!」
『夫婦じゃない!』


「おお、すげぇ息ぴったり」


「見て見てこの写真!デート中のカップルって感じゃない?」




楽しそうに目を輝かせる芦戸ちゃんの手元のスマホには、私と勝己の写真が表示されていた。

1つずつイヤホンをつけて音楽を聞いている瞬間、
向かい合ってインターン先について話している瞬間、
勝己が私のチョーカーを引っ張ってからかっている瞬間。


芦戸ちゃんが撮ってくれた写真を見ると...確かに、恋人同士に見えないこともない。
...残念ながら、実際の会話は全くロマンチックなものではなかったけれど。



「爆豪、公衆の面前で迫るとか、大胆なやつだな!漢気あるぜ!!!」


「能天気に親指たててんじゃねぇ切島、折るぞ」


「しっかし、性格がクソだからあんまり言いたくねぇけど、静止画で見ると、爆豪って男前だよなー。
美男美女って感じでお似合いだと思うよ、お前ら。」


「良い度胸してんじゃねぇか、個性かぶりの電気野郎が」


「褒めてんのに、理不尽...!」


『み、みんな!問題解き終わったなら答え合わせしよっか!』


「あれ〜、もしかして橘照れてる〜?」


『照れてないから!
芦戸ちゃん、1問でもミスってたら罰ゲームだからね!』


「突然のスパルタッ!」


『ほらほら、元の席の戻るよ〜!』



好き放題に騒ぐみんなの相手をしていると、まるで幼稚園の先生のような気分になる。
いや、幼稚園というよりは動物園の職員か...?

でも、こうやってクラスメイト達と戯れている時間は、居心地がよくて大好きだ。


そして──


『英語の答え合わせが終わったら、次は勝己が理系科目を教える番だからね』



態度には出さないけれど、きっと勝己にとっても、心地良い時間なのだろう。

めんどくせぇな、と短く言い放った勝己の声は、いつもより少しだけ優しかった。

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