第19章 独占欲
*轟side
『やっぱなんでもない。
...もう、気にした私がバカみたいじゃん。』
リョウは、頬を膨らましてそっぽを向いた。
我ながら意地の悪いことをしたと思う。
もちろん、質問の意図はしっかりと理解していたが、俺の言動に一喜一憂してコロコロ変わる表情を見ているのが面白くて、ついとぼけてしまった。
不機嫌そうな顔も、動揺が悟られないように焦っている姿も、俺だけに向けられたものだと思うと、なんだかとても愛しい。
...なんてことを考えてしまう俺は、どうかしているだろうか。
『なにニヤけてんの』
「ん」
『人の不機嫌な顔を見て楽しむなんて、良い趣味してるね。
これから爆豪と呼んであげよう。』
「やめてくれ」
不覚。
感情が顔に出てしまっていたようだ。
危うく不名誉な呼び名を冠されてしまうところだった。
『....ふふっ』
「何だ急に」
『なんかさ、焦凍、体育祭以来、表情が柔らかくなったよね。』
「そうか?」
『そうだよ。入学当社は中二病をこじらせたガンギマリ野郎だったじゃん。」
こいつ、そんな目で俺のこと見てたのか。
『でも、体育祭で覚醒してから、よく笑うようになった。』
「覚醒って...自分の個性を正当に使っただけだろ。大げさな。」
『こういうの、人として成長してる、っていうのかな。
きっと、デクくんの影響だね。』
そう言ってはにかむリョウの声は、なんだかすこし嬉しそうで、心地が良い。
確かに、緑谷が俺の価値観を変えたのは言うまでもない。
あいつが俺にとって重要な存在であることは間違いないだろう。
ただ──
それと同じくらい、俺にとって、お前が大きい存在であることなんて、お前は気づいていないんだろうな。