第18章 特別講師
*緑谷side
「気付いたらあんなに上手に個性を使いこなすようになっちゃって、挙句の果てにヒーローになりないなんて言うもんだから、お兄ちゃんびっくりだよ〜。」
「...そんなに、あの、しょぼかったんですか?」
「それはもう、絶望的なほどに。
そもそもの使い方を理解してなかったからね。
無意識に放電しちゃうし、発動したい時に発動できないし。
....まぁ、使いこなせるようになった今でも、調整は相変わらず下手くそだから、僕が作った制御装置を身に着けさせてるんだけど」
「あ、あれ、お兄さんの発明品だったんですね....!」
「そうだよ!美しいだろ?リョウによく似合ってると思わない?」
「は、はい...!」
「まぁ...とにかく、兄の僕が言うのもなんだけど、あの子は相当努力したと思うよ。
天才の僕と違って、生まれ持った才能がなかった分、必死に理論を学んで、個性の発動方法から応用方法までしっかり頭で理解して。
ああ...毎晩悔し泣きしながら勉強してたリョウ、たまらなく可愛かったなぁ...」
ルイさんは、顎に手を添えて恍惚とした表情を浮かべる。
妹相手にする顔じゃないだろ、それ。
「あの、ルイさん。
なんで、嫌いなんですか?ヒーロー」
「....リョウから、僕らの家族のこと何も聞いてないの?」
「いえ、特には...」
「そっか〜...じゃ、続きはそのうち妹から聞いてみて」
ルイさんは、人差し指をたて、ウインクをした。
絵になるというか、やり慣れてるなぁ...
なんにせよ、この場で僕に理由を話す気はないようだ。
呆気にとられていると、オールマイトと一緒に数メートル先を歩いていたリョウちゃんが、後ろを振り向いた。
『...何話してたの、お兄ちゃんと』
「えっ、いや、あのっ、リョウちゃんの個性の話とか、制御装置の話しとか」
『....ふーん。まぁいいや。行こ、デクくん。』
「わっ」
リョウちゃんは、僕の手を引っ張って、ずんずんと歩き始めた。
僕は、ルイさんの痛いくらいに鋭い視線を背中に感じながら、教室に入っていった。