第17章 隣の男
*主人公side
昨日、A組女子会の真っ只中に、お兄ちゃんから届いたメッセージには、
こんなことが書いてあった。
[Hey, my sweetie!
元気にしてる?リョウの大好きなお兄ちゃんだよ!
本当にJapanに行っちゃうなんて、お兄ちゃんはとっても寂しいよ。
寂しすぎて耐えられなかったから、僕も日本に行くことにしました。
明日そっちに着くから、welcome kissの用意をしといてね!]
ほんの5秒で読めてしまうような短い文章だというのに、あまりの情報量の多さに頭痛がする。
──そう、私の兄は、異常なシスコンで変態だ。
加えて、生まれ持った個性の性質上、とんでもなく頭が良い。
常人では到底予想できないくらい先のことまで見据えて行動する。
彼の行動は、全てが伏線だ。
その強個性と変態性に、私は生まれてからずっと振り回されてきた。
お兄ちゃんのことが嫌いなわけではない。
むしろ好きだし、一応尊敬はしているし、仲良くしたいという意志もある。
ただ、彼と一緒にいると、全ての物事が彼の思惑通りに動いてしまい、
代わりに私が損をするという展開が今までに数え切れないくらいあった。
幼少期の私が「少し距離をおくくらいが丁度良い」という結論に至るのも、無理のない話だ。
──と、過去に思いを馳せた瞬間、
リップ音とともに、頬に柔らかな感触が。