3年滅組、それは問題児の集まるクラスでした。/ 鬼滅の刃
第1章 3年滅組
気を取り直して出席の続きを取る。
「出席番号8番、悲鳴嶼行冥くん」
「………はい先生」
身長200cmをゆうに超える悲鳴嶼くんは、とても高校生とは思えないほどの巨漢だ。その風貌も特殊で、常に数珠を持って合掌、周囲の事柄によく涙を流している子だった。
「ええと………今日はなんで泣いてるのかな?」
どうやら今日も何かあったらしい。白い目から流れる涙がその証拠だ。
「先刻の先生と時透のやり取りを拝見した。生徒に正論を突かれ押し黙るあの様……まあなんとも教師というのは不合理で浮かばれぬものだと。そんな先生の立場を嘆き哀れんでいたのだ………」
「あ、ああそう……ありがとう」
なんだろう。嬉しいような、嬉しくないような。複雑な感情である。
「……………南無阿弥陀仏」
じゃらじゃらと数珠を擦り合わる悲鳴嶼くん。
彼は別段一般生徒と折りが合わない訳でも、コミュニケーション能力がない訳でもない。ただみんな口を揃えて言うのだ。授業中に念仏をひたすら唱えていて怖い、と。確かにそんなものを毎日聞かされていては授業も集中出来ない。教師の一人は夢にまで悲鳴嶼くんが現れて念仏を唱えていて参っていると頭を抱えていた。そんなこんなで彼は滅組に通うこととなったのだが、まあ彼は彼なりに滅組を享受しているように見える。
「………じゃあ最後。出席番号9番、煉獄杏寿郎くん」
「はい先生!」
大きな声で返事をして、椅子からガタッと立ち上がる煉獄くん。
「出席番号9番、煉獄杏寿郎!今日も元気に登校している!健康状態も別段問題なく非常に良好だ!」
煉獄くんは模範的な生徒だ。どの教師の授業もきちんと受け、クラスメイトとの仲も良好。素行が悪いわけでもなく、上下関係を重んじる礼儀正しい子だ。どちらかというと滅組に入れられるような生徒ではない。ただ、悲鳴嶼くんと同じく少し個性的な部分があった。