3年滅組、それは問題児の集まるクラスでした。/ 鬼滅の刃
第5章 喧嘩上等
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ギリ……ギリ……
「……くっ……」
拘束されてどのくらいの時間が経っただろう。
両の手首と足首を必死で擦り続けているけれど、なかなか紐は外れてくれない。
度重なる摩擦で、段々と手足もひりついてきた。
早く。早くしないと宇髄くんが来てしまう………
そんな思いとは裏腹に、刻一刻と時間は過ぎてゆく。すぐ傍には3人の見張り。拘束されて身動きの取れない身体。依然として変わらない状況に、の顔には焦りの色が見え始めていた。
『……人、質……?』
それは学校に欠勤をすると伝えて電話を切った後のこと。再び携帯を取り上げた男が話したことで初めて知った。
『そうそう、先生は人質。宇髄の弱味になりそうだったからさ、利用させてもらったわけ』
『そんなっ……じゃあ宇髄くんは!?』
『あー……総長が呼び出ししてるだろうし直に来るんじゃね?』
やられた。仕組まれていたのはわかったが、まさかこれが宇髄くんを引き摺り出す為の計画だったなんて。助けに来たつもりがまさか人質になるなんて。迂闊だった。
『……じゃあ、この場所を教えてくれたあの子は……』
ふと疑念を抱いたのは今朝、宇髄くんが戻らないと心配して拠点の場所を教えてくれた女子生徒。
全てが計画だというならあれも嘘だ。手を組んでいたことになる。
信じたくはないけれど、そうでないと辻褄が合わなかった。
『………ああ、あいつね。あんたを確実に誘き出す役を喜んで引き受けてたぜ。まあ一つ条件があるって総長に提示してたけど』
…………条件?なんの?
それは私が聞こうとするよりも早く、男の口から答えられた。
『───あの女を二度と学校に来れないようにしてほしいってさ』
じわりと、嫌な汗が背中を伝った気がした。