3年滅組、それは問題児の集まるクラスでした。/ 鬼滅の刃
第4章 不穏な足音
『───町外れにある廃墟倉庫です。周辺は廃材が山のように棄てられている場所で、普通の人が寄り付くことはまずありません』
『………わかった。あなたはいつも通り学校に行ってくれる?』
彼女から聞いた場所を目指して走る。彼女は先に学校に行かせた。これ以上危険な目に合わせる生徒を増やす訳にはいかなかったから当然だ。
向かうは他校の不良集団の拠点。
まさか自分がこんな騒動に巻き込まれるなんて思わなかった。普通の教師になって、当たり障りのない授業をして、涙の卒業式を迎えて。そんな平凡な教師人生を思い描いていた。それがまあ1ヶ月でこんなドラマのような展開になるなんて。
それでも、見過ごすことが出来なかったのは確かだ。宇髄くんとの始まりはどうであれ、彼が大事な生徒に変わりない。きっとこれが他の生徒であっても同じ決断をしただろう。
どうか無事でいてほしい。今はただそれだけを願っては先を急いだ。
「………ここだ………」
着いた先。息を切らし見上げるのは廃墟倉庫。間違いない。彼女の言ってた拠点だ。周囲には大量の廃材が乱雑に棄てられている。だが、不思議なことに人の気配が全く感じられない。
本当にいるのかな………
倉庫の入口。暗い中を伺った瞬間、ガッと背後から首に腕を回された。
「っ!?」
「はいお疲れー。さすが先生。来ると思ってたよ」
すぐ後ろで男の声がして、もう片方の手が前に回ってくる。その手に持っていたハンカチに強く口を塞がれる。
鼻の奥にツンとくるような刺激臭を帯びたアルコールの匂い。まずい。本能がそう叫んだ。は逃れようと必死で男の腕に爪を立てる。だが、びくともしない。
「……っ……」
秒を増す毎にどんどん霞んでくる視界。ぐにゃりと揺れる倉庫。
それを最後には意識を手放した。