3年滅組、それは問題児の集まるクラスでした。/ 鬼滅の刃
第4章 不穏な足音
「すいません先生、手伝ってもらっちゃって。本当はもう一人いたんですけど、今日風邪で学校休んでて……」
「いいのいいの。竈門くん一人じゃ大変でしょ?気にしないで」
「先生は優しいなぁ……ありがとうございます!」
「悪ィな。やっぱ今日はやめとくわ」
「え?」
ほらまた。すぐに行ってしまう。優しく解かれた腕が、今日は図書室の中へと消えてゆく。
「よォよォお二人さん、図書委員の仕事捗ってるか?」
「あ、宇髄さんどうも!」
「あれ?図書室に来るなんて珍しいね宇髄くん。漫画は置いてないよ?」
「おいコラ。俺だって本くらい読むっつーの。あんまバカにしてっとここで抱くぞ」
ああ、だから嫌いなんだよね。廊下に置き去りにされた彼女の手が、ゆっくりと握り拳を作ってゆく。
「だ、抱くっ…!?ここで…!?」
「なっ……また宇髄くんは人前でそういうこと言う!」
「よし、じゃあ人のいねェとこで失神するほど言ってやるからこっち来い」
「おおおお二人はまさかそんな関係なんですかっ……!?」
「ち、違う違う竈門くん!勘違いだからあっ……!」
顔を赤く染めながら男子生徒に両手を振って誤解を解いてる。カウンター越しでそれを見て面白がって笑っている宇髄。
彼女の心の中にぐるぐると憎悪が渦巻く。
「ほんっと目障りでうざったい女………」
「おい」
突然、声を掛けられて彼女の肩がびくりと跳ねる。そこに立っていたのは本を抱えた伊黒だった。
「入るのか入らないのか」
「…………は?」
「俺は図書室に入りたい。入るつもりがないなら邪魔だ。そこを退け」
「…………チッ」
舌を鳴らして走って逃げていく彼女。
「…………なんだあいつは」
そんな遠ざかる背中を伊黒は眉を顰めながら眺めるも、すぐに本を抱え直すと図書室に入っていった。