3年滅組、それは問題児の集まるクラスでした。/ 鬼滅の刃
第4章 不穏な足音
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「てーんげん!」
放課後の校舎。金色に染められた髪を揺らしながら宇髄の背中を叩いたのはある女子生徒。後ろを一瞥して「おォ。どした?」とそのまま歩き出す宇髄に、彼女はするりと自分の腕を絡ませながら隣を歩く。
「ねーねー最近全然かまってくれないじゃん。何でよ?」
「そんなことなくね?」
「いやいやそんなことあるし」
去年までよく大勢で一緒に遊んでいた二人。学校をサボって街へ出て。遊んで駄弁って夜が明けて。まあ所謂不良仲間というやつだ。それがここ最近、宇髄が全く顔を出さなくなった。付き合いが悪くノリも薄い。学校で声を掛けてもすぐに何処かへ行ってしまう。そんな以前と違う様子の宇髄が彼女は面白くなかった。
「3年になってまじで遊んでくれないよねー。女でも出来たの?」
絡みつく甘ったるい香水が鼻を掠める。あんまこの匂いは好きじゃねェ。あいつはもっと清潔でいい香りがすんだけどな、と脳裏でぼんやりと別の女を思い浮かべる宇髄。
「いねーって。女出来たら派手に言いふらしてるからな俺は。そんな話聞かねェだろ?」
「………まーね。聞かない」
でも、と彼女は歩きながら思う。別の話はよく聞く。今年新しく入って来た滅組の担任の女。あれに宇髄がよくちょっかいを出していると。
「ねーねー寂しー。カラオケ行こー」
「あー、そうねー……」
甘えるように腕に寄りかかったその時、宇髄の足が止まった。同じように足を止めて宇髄の顔を見上げると、図書室の中を見ている。
「天元?どうし………」
宇髄の体の横から少し顔を出して視線を追ってみると、受付カウンターで本を整理している二人が見えた。男子生徒と………あの教師。