3年滅組、それは問題児の集まるクラスでした。/ 鬼滅の刃
第4章 不穏な足音
おいおいおい。待て待て。
生徒が学校に来るのは当たり前だろ?それをありがとうなんて言う教師なんざ見たことも聞いたこともねんだけど。
『えっと……人って会ってみて初めてその人がどんな顔なのかわかると思うの。その人のその時の表情って言うのかな……それからたくさん話をして、同じ時間を共有することによってその人自身のことも深く知っていけると思ってて……』
ああ、何言ってるのかわかんないよね。ごめんね。そう付け足すは、少し緊張混じりの顔で出席簿を大事そうに抱きしめながら笑った。
『だから明日も顔見せてね、宇髄くん』
ほんの興味本位が、好奇心へと形を変えた瞬間。
『……………』
この時の俺の足といったら。もう完全に行き先を忘れちまってたな。興味本位で見に来たはずの新任教師に見事出鼻をくじかれて。言葉もなーんも出なかったっつうわけだ。
『ああっ、もちろん宇髄くんだけじゃなくて他のみんなも……!』
慌てて他の奴らに顔を向ける。それまでの俺とのやりとりを見ていたからか、教室には和んだ空気が充満していた。
『………ああ、もちろんだ。よろしく頼む先生!』
もとから快く迎え入れるつもりだったが、それが俄然増した煉獄。
『こちらこそよろしくお願いします。先生』
自然な笑顔を浮かべる蝴蝶。
『わ、私からもお願いしますっ!』
真っ赤な顔で頭を下げる甘露寺。
『ならまずは席替えだ。この配置には不満が残る。話はそれからだ』
とは言ってるが視線をビミョーに逸らしてる伊黒。
『……………』
無表情でこくりと深く頷く冨岡。
『………まあ、僕は言われなくても学校には来るけどね』
相変わらずぼやっとした時透。
『何とまあ綺麗な心だ……私で良ければ先生の力になろう……』
やっぱり今日も泣いてやがる悲鳴嶼。
『おい宇髄。んなとこ突っ立ってねえで早く席着けェ』
んで、照れ隠しなのかを見ずに俺に振ってくる不死川。
ああ、このまま帰るのは少しもったいないかもしれねェ。そう思った俺の足は吸い寄せられるように教室に戻っていった。それがと出会った最初の日の出来事だ。