3年滅組、それは問題児の集まるクラスでした。/ 鬼滅の刃
第3章 昼休憩
あんな素敵な人の下で働けるなんて教師冥利に尽きるというもの。まだまだ新米教師として不安はあるけれど、3年滅組の担任として少しでも周囲の期待に応えていかなければな、と気合いを入れ直す。
「………よし!」
ともあれまずは腹ごしらえだ。かの国の戦国時代から由来したとされることわざでもあるように、腹が減っては戦はできぬという。滅組の生徒を毎日指導するのは良くも悪くも体力がいるのだ。しっかり食べてたっぷり休息を取って、来たる五限の数学に備えよう。
は箸を取り出し合掌をした後、まだ仄かに香ばしい匂いのする唐揚げを摘まんで口を開けた。
「いただきまー……」
「失礼します!先生はいますかっ!?」
バンッと派手な音を立てる職員室のドア。何事かと驚いて手を止めて見れば、入口で女子生徒が息を切らしながら室内を見回している。
「ああよかった!先生いた!」
やがて自分を発見した女子生徒は安堵の表情を浮かべながらこちらに足を進めてくる。
あ、待って。何かすごく嫌な予感がする。
少し待っ………
「あのっ、大変なんです!先生のクラスの子達が喧嘩しててっ……!」
「………………」
ああ、お昼休み終了だ。
ボトッ
の箸を持つ手が緩んで唐揚げが落下する。それはまるで、彼女の貴重な昼休憩が終わる合図でもあるかのように、スローモーションで落ちたのだった。
「…………まったくもう!」
さっき女子生徒から聞かされた内容を思い出しながら、は急いで3階までの階段を駆け上がってゆく。
どうやら喧嘩をしてるのは宇髄くんと不死川くんで、相手は鬼組の生徒だそうだ。その子が発見した時には既に険悪な空気が漂っていたらしく、詳しい理由まではよくわからないそう。ただ、聞こえてきた彼らの会話によれば、廊下で肩がぶつかっただとか、道を譲れとか譲らないだとかで、一触即発の雰囲気だったらしい。
そしてそんな問題児達が起こした喧嘩の為に、どうやら私はお昼ご飯を食べ損なって昼休憩を返上しなければならないみたいだ。
ああ、泣ける。
悲鳴嶼くんがこれを見たらまた数珠を擦り合わせながら涙を流してくれるんだろうな……南無阿弥陀仏。