• テキストサイズ

【リヴァイ】彼と彼女の最終回【進撃の巨人】

第18章 ◇17話◇兵士の記憶(前編)


ベッドから降りた私は、医務室の奥のデスクでカルテにペンを走らせている医療兵の背中を見つけた。
視線だけを動かして医務室の中を見渡す。
ここにいるのは私と、仕事中の医療兵だけのようだ。
薬の匂いのする医務室はあまり好きじゃない。
だから、リヴァイの執務室に戻りたいだけだ。
でも、ここで待っていろとリヴァイは言った。あの医療兵は、リヴァイの指示に従うに違いない。
それなら、こっそり医務室を抜け出すしかないのは、仕方がないことだと思うのだ。
別に、逃げようとしているわけではないのだから、いいだろう—そんな都合のいい言い訳をして、音をたてないように忍び足で医務室を出る。
気づかれなかったことにホッとして、息を吐いた。
しばらく歩いたところで、廊下の向かいから歩いてきている調査兵を見つけた。
あれは、リヴァイ班にいた新兵の青年だ。
私のことを見た瞬間に怯えたような表情を見せたときも、不思議に思ったが、リヴァイ達の態度も気になっていた。
この世界で私が初めて会った人達は、とりあえず、知り合いでもそうではなくても、自己紹介をしてくれた。
でも、彼だけは違った。
私の視界に出来るだけ入らないように心掛けているようだったし、リヴァイ達も彼を私に紹介しようとはしなかった。
むしろ、誰も彼の存在に触れなかった。
まるで、いない存在みたいに。私に気づかれたくないみたいにー。
なぜだろう、とずっと気になっていてー。

「こんにちは。」

下を向いて歩いていた彼は、私が声をかけるとビクッと肩を揺らして顔を上げた。
そして、視界に私を捉えれば、驚くくらいに怯えて数歩後退った。
まるで、巨人を始めて見たときの私のようだ。

(それはないか、私は気絶しちゃったし。)

でも、まるで初めて巨人を見た人間のようだと勘違いしてしまうくらいに怯えているのだ。
彼は私が怖いのだろうか。
いや、この世界のが、怖いのだろうか。

「私、君に何かしちゃったのかな?」
「え?」
「私のこと、怖い?死んだ人間だから、怖いのかな?」
「ち、ちが…っ!違います!そうじゃなくて、俺が…!!」

焦ったように彼が顔の前で両手を左右に振った時だった。
目の前で、眩いくらいの光が放たれた。
驚いた時にはもう私は、とてつもなく熱くて硬くて、そして大きな何かに、身体を激しく突き飛ばされていた。


/ 84ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp