第18章 ◇17話◇兵士の記憶(前編)
「さん…っ、ごめんなさい…っ、おれ…っ。」
悲痛な叫びが聞こえた方に視線を這わせた。
そして、ひどく驚いた。
だって、大きな腕の向こうにあの青年の姿が見えたのだ。
まるで、その腕の持ち主みたいにー。
「エレン!さんに話しかけるんじゃねぇよ!!
お前は近づくなとリヴァイ兵長に命令されてたはずだろ!!」
「ごめんなさい…っ、俺が…、俺のせいで…っ。」
私を怯えた顔で避けていた青年は、泣きそうな顔で繰り返し謝る。そんな彼を、大勢の調査兵が責め立てていた。
どうやら、彼がエレンらしい。
あぁ、だからー。
自分を守るために上官の恋人が死んだことを理解していたから、エレンはあんなに私に怯えていたのかー。
だからきっと、あれは怯えではなくてー。
「殺して、ください…。俺なんて、殺して…っ。」
エレンの頬を涙が伝う。
あぁ、ずっと、彼はひとりで、苦しんでいたんだろうか。
自分を殺してほしいと繰り返してしまうほどに、ひとりきりで苦しんでー。
次第に遠のく意識の向こうで、エレンの悲痛な声だけが響き続けていた。