第16章 ◇15話◇彼と彼女の初回
自力で歩くことすら出来ない酔っ払いになってしまっていたは、大嫌いな男に横抱きに抱えられていた。
とても最低な気分ではあったけれど、視界が高くはならない硬くて細い腕の中は、意外と心地よかった。
リヴァイの力が強いおかげで、全くフラつかずにアパートメントまでの道のりを歩いてくれていたからだろう。
兵士をしている女性は、どうしても筋力がつくことで体重がそれなりに重たくなる。
でも、リヴァイは全くその重さを感じていないようだった。
ただ、とても苛立っていた。
「2かいの、3ばんめ~…。」
「チッ。」
リヴァイの腕の中で、道案内だけしていれば部屋に辿り着くなんて、最悪の中のラッキーだった。
道案内する度に聞こえる舌打ちさえ聞き流せば、だけれどー。
「おい、着いたぞ。鍵はどこだ。」
「あ~…、どこだっけ…?ポケットかな…?」
リヴァイの腕の中でもぞもぞと上着のポケットから鍵を取り出す。
すると、一刻も早く帰りたいらしいリヴァイが、奪うように鍵をとりあげて鍵穴にさした。
「きったねぇ部屋だな。」
扉を開けたリヴァイは、散らかった部屋に眉を顰めた。
ウォール・ローゼの旧調査兵団本部への遠征前に荷物の準備をしたときのままで、確かに服も本も散らかり放題だったのを思い出した。
でも、今はそんなことより、眠たいー。
「ベッドまで、はこんでねぇ~…。」
「どこのお姫様だ、てめぇは。」
リヴァイは苛立ったように言いながらも、ベッドまでを運ぶ。
そして、ひどく雑にベッドに落とした。
ボフッと音を立ててがベッドに落ちる。
それに対して文句のひとつでも言いたかったはずだったが、すっかり夢の世界に入っていたは、ただただ気持ちよさそうに寝息を立てていた。