第16章 ◇15話◇彼と彼女の初回
飲み過ぎたー…。
店を出て、リコ達と別れたは、建物の壁に手をついて歩きながら、覚束ない足をなんとか支えていた。
酒でガンガンする頭が痛くて、顔を上げられない。
だからといって、視界がぐらつく地面を見下ろしながら歩くのは、それはそれで吐きそうでどうしようもない。
イアンの忠告を聞いて、途中でやめておけばよかったと後悔するがもう遅い。
明日は一日中、二日酔いに苦しみそうだ。
それもこれも、あのチビの殺し屋のせいだ。
(訓練指導が終わってからも私を苦しめるなんて…!)
が理不尽な怒りを爆発させそうになっていたとき、手を添えていた店の扉が開いた。
手を離して避ければよかっただけなのだろうが、酔っぱらってふらついていたはそのまま後ろに倒れて尻餅をついてしまった。
「チッ、…大丈夫か。」
全く心のこもっていない心配の声と共に、扉を開いた男がに手を伸ばす。
誰かの手を借りないと起き上がれない自覚はあったから、は差し出された手に自分の手を伸ばしー。
「あ。」
「あ。」
手が触れる直前で気が付いた。
こんな最低な状態になった諸悪の根源が、の目の前にいた。
リヴァイも驚いたようで、三白眼が見開かれていた。
そして、途端に手を引っ込めると、蔑むような目で見下ろされた。
「なんだ、てめぇか。兵士なら1人で立ち上がりやがれ。
倒れるまで酔っぱらいやがって、情けねぇ。」
「誰のせいでこんなことになったと思ってんの?」
「俺のせいだっていうのか。てめぇが酔っぱらって勝手に倒れたんだろおが。」
「あんたのせいで飲み過ぎたのよ!」
「とんだ言いがかりだな。」
「とにかく、早く手を貸しなさいよ。起き上がれないのよ。」
「それが人にものを頼む態度か。」
「普通は頼まれなくても、か弱い女が倒れてたら手を貸してやるのよ!
あんただってチビだけど男でしょ!」
「あぁん?悪ぃが、俺もか弱い女になら手を貸してやる主義だ。」
本当に腹が立つ。
でも、もう文句を言うのもツラくなってきた。
あぁ、頭が痛いー。
最悪だ。
「おい、頭が痛ぇのか。」
ガンガンする頭を抱えていると、頭上からさっきよりは幾らかは心配そうなリヴァイの声が落ちてきた。