第15章 ◇14話◇心臓の音がする悲しい嘘
不安そうな瞳は、私を見ているようで、見ていない。
いやきっと、真実が怖くて、目を反らしている。
恋人の死を頭では理解しているけれど心が否定しているー、ハンジが言っていたことは本当だった。
「私は、いるよ。ここにいる。」
膝の上で震えていたリヴァイの手を両手で包んだ。
冷たいその手を、私の手が温める。
そんなことが出来るのは生きているからで、本当は彼女がしてあげたかったことー。
リヴァイが私を抱きしめる。彼女だと信じてー。
もう本当に、最低な気分だ。
これで元の世界に戻れなかったら、私は一生、この最低な気分のまま生きていくのだろうか。
「心臓の音、聞こえるでしょう?」
「あぁ、聞こえる…!」
リヴァイが強く強く、私を抱きしめる。
ここに彼女がいることを確かめたくて、心臓の音を重ねたくて、強く、強くー。
どうして、こんなこと言ってしまったのだろう。
これでは、生き返ったみたいじゃないか。
いつか、サヨナラするのにー。
私は元の世界に戻って、リヴァイは恋人が死んだという現実の中を生きていかなきゃいけないのにー。
ただ、ひどくツラそうなリヴァイを見ていられなくてー。
『私の代わりに、あの人を助けてー。』
切ない声が蘇る。
あぁ、だからかー。
彼女の深い愛を知ってしまったから、思わずリヴァイの心を守ろうとしてしまったのだろう。
でも、そんなこといつまでも続けられない。
早く、元の世界に戻れる方法をハンジに見つけてもらわなければー。