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【リヴァイ】彼と彼女の最終回【進撃の巨人】

第15章 ◇14話◇心臓の音がする悲しい嘘


「私…、少しだけ、思い出したの。」

リヴァイの方を向いて、目を見て、嘘を吐いた。
少しずつ見開いていくリヴァイの切れ長の瞳を眺めながら、心の中で、自分のことを、最低だと罵った。
自分が助かるために、恋人を心から愛している人を騙そうとしている。
いや、騙してる。
心の傷につけこんで、心の傷に塩をぬろうとしているー。

「本当か…?」

期待よりも、どこか不安を残した目でリヴァイが訊ねる。
私が頷けば、彼はゆっくりと息を吐いた。
でも、抱きしめようと伸びた彼の手を止める。
戸惑う彼に、私は言いたくないことを言う。

「ごめんなさい…。リヴァイのことも、ハンジ達のことも、私は思い出せないと思う。」
「…思い出したんじゃなかったのか。」
「私が思いだしたのは、ここに戻って来た理由なの。」
「…それはお前が生きてたからだろ。死んでねぇからー。」
「違うよ、リヴァイ。」

初めて、私からリヴァイに触れた。
説得するように両腕をそっと握る。
彼は、とても不安そうだった。

「すごく、大切な人がいた。その人は、とても傷つきやすくて
 でも、それを隠して強くあろうとしてしまう人。」
「…っ。」
「覚えてないけど、それはあなたでしょう?私、あなたを助けたかったの。
 そう願っていたら、気づいたらここにいたの。それが、私が思い出したことだよ。」

思い出を教えてやってもいいが、嘘の記憶を刷り込んだところで、どうせすぐにボロが出るー。
そう言ったハンジが、とりあえず、記憶はないままで天使として戻ってきたことにするのがいい、と提案した。
だから私は、嘘がバレてしまわないように、切ない声が私に教えてくれた真実を交えて、リヴァイに伝えた。
本当は、伝えるべきは彼女なのだろう。
私の口からそれが出た途端、彼女の深い愛が、嘘になってしまう酷い現実。
最低な気分だ。

「死んだみてぇに…、言うんじゃねぇ。」
「リヴァイ、私はー。」
「死んでねぇ!!」

急にリヴァイが大きな声を出すから驚いた。
ビクッとした私に、リヴァイは途端に消え入りそうな声で「すまない」と謝った。
伏せた目の下で長い睫毛が影を作っていて、胸が痛くなった。

「ねぇ、リヴァイ。聞いて。」
「…なんだ。」

リヴァイが僅かに顔を上げた。
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