第14章 ◇13話◇パラレルワールド
でも、ハンジの理屈はよくわかった。
だから、モブリットも難しい顔で黙り込んでいる。
だって、彼は、私が生き返って戻ってきてくれたと信じていて、それをよかったと思っていたのだ。
きっと、私が彼女じゃないという事実は、出来れば認めたくはないだろう。
でも、私は違うー。
「もし、私が本当にパラレルワールドに来てしまったなら
元の世界にはどうしたら戻れるの?」
「…それは、分からない。何かきっかけがあって来てしまったのか、
それとも偶然なのかも分からないし…。」
ハンジは申し訳なさそうに言う。
私は絶望と希望を一度に見たような気分だった。
頭では、あり得ないと切り捨てようとしているのに、心のほとんどが、ハンジの話を信じている。
まさか、あのドラマみたいなことが自分に起こったなんて信じられない。
でも、そうでも考えないと、巨人がいたり、兵士だらけだったり、知らない恋人がいたりーというこの状況を説明できないのは私だって同じだった。
「ねぇ、は覚えてないの?
この世界で目を覚ます前に何をしていたのか。そこにヒントがあるかもしれないよ。」
ハンジに言われて、私は必死に記憶を辿る。
あまりにも意味の分からない状況に放り込まれ過ぎて、これからどうなるのかばかリ考えていて、その直前にあったことを敢えて思い出すことはなかった。
そこに、本当にヒントがあるのなら、何が何でも思い出さなければならないー。
「…ドラマを見ようと思ってて…。」
「ドラマ?」
「そう、大好きなイケメン俳優のドラマが見たくてテレビをつけたあと、
会社帰りに買った白いワンピースを着て鏡の前に立って…それで…。痛…っ。」
そこまで思い出して、頭に痛みが走った。
痛みに顔を歪めて頭を抱えると、慌ててモブリットが私の隣に座った。
背中をさすりながら、大丈夫かと声をかけてくれるモブリットの声を聞きながら、痛みの激しい頭を抱える。
痛い、痛いー。
強く目を瞑って、痛みに耐えていると、頭の奥から何か声が聞こえてきた。
悲しいくらいに私に懇願するそれは、聞いたことがある声だ。
『私の代わりに、あの人を助けてあげて。そして、伝えてー。
私はもう死んだんだってー。それからー。』
ハッキリと声が聞こえた途端、痛みから解放された。
そして、一気に記憶が蘇ったー。