第14章 ◇13話◇パラレルワールド
私がリコのことを考えて頭が痛くなっている間に、モブリットの話は訓練兵団を卒業した後のことになっていた。
卒業後、調査兵になったモブリットと駐屯兵になった私は会うこともなくなったが、ある日、偶然再会することになった。
そのときが、私とリヴァイとの初めての出逢いなのだと教えてくれた。
「最初は気が合わないみたいではすごくリヴァイ兵長のことを嫌ってたよ。
今なんかよりもだいぶ尖ってたリヴァイ兵長に真正面から文句言うもんだから
こっちの方がヒヤヒヤしたよ。」
モブリットは胸に手を当てて、大きく息を吐いた。
よくわからないが、私の知らない私は、今のハンジがしているように彼に苦労をかけていたのかもしれない。
「それでよく結婚しようなんてことになったね。」
「だからじゃないかな。」
「だから?」
「きっと、リヴァイ兵長は嬉しかったんだよ。
自分と真正面から向き合ってくれる人が現れて。
付き合うまでは、いつも喧嘩ばかりしてた2人だけど、すごく楽しそうだったから。」
「喧嘩するほど仲がいいってやつかな?」
「あぁ、そうだね。リヴァイ兵長はの邪気のない心に惹かれたんだと思うよ。
いつだって真っすぐで明るくて、すごく素直なのそばはきっと
欺瞞だらけの世界で唯一安らげる場所だったんだ。あの人が結婚を決めたくらいだから。」
「…そう。そんな人が死んでしまって、つらいね。」
「でも、は戻ってきてくれた。よくわからないけど、俺は本当に良かったと思ってる。
リヴァイ兵長は、が死んでから、生きていても、死んでいるみたいだったから…。」
私は、返事が出来なかった。
聞かなければよかったー、と酷く後悔した。
だって、モブリットが想い出を語った彼女が、私ではないことを私が一番知っているから。
でも、それならリコも、私の知っているリコのそっくりさんなのだろうか。
どう説明すればいいか分からない状況で、この世で誰よりもリヴァイを傷つける存在が私だということだけは、今、ハッキリと自覚した。